「特に理由はないのに、膝が痛くなった」「膝の内側がパキパキ音がして痛い」 こんな相談を受けることがあります。
それは「タナ障害」が原因かもしれません。
膝の関節の中には 滑膜ひだ(かつまくひだ)、通称 「タナ」 と呼ばれる膜のひだがあります。このひだが、膝の動きの中で骨や軟骨とこすれて痛みの原因になることがある。これを タナ障害 と呼びます。
ただし、先に言っておくと、タナは多くの人の膝に普通にあるものです。「ある」だけでは痛みの原因とは言えません。
今回は、滑膜ひだとは何か、どんな症状が出るのか、エコーでどう評価するのかを、論文をもとに整理します。後半では、当院で実際に経験した 50代の女性バスケットボール選手 と 10代前半の男の子 の2つの症例を紹介します。

内側のタナ障害で痛みが出やすいのは、お皿の内側のふちから、内側の骨の前にかけてです
1. 滑膜ひだ(タナ)とは
膝の関節は、滑膜(かつまく) という薄い膜の袋に包まれています。滑膜は関節の中を潤す液(関節液)をつくる膜です。
ひだは、お母さんのお腹の中で膝の関節ができていく途中に残った組織 だと考えられています(Ogata 1990)。 ひだがあること自体は珍しくありません。400膝を関節鏡で調べた研究では、内側のひだが72.0%の膝で見つかっています(Kim 1997)。
つまり、タナは「異常な構造」ではなく、多くの人が持っている「個性」のようなもの です。
2. どんな症状が出るのか
タナが痛みの原因になるのは、使いすぎやけがをきっかけに、ひだがお皿や太ももの骨とこすれて炎症を起こしたときです。炎症をくり返すと、ひだは厚く硬くなって柔らかさを失い、挟まりやすくなると考えられています(Hermena 2026)。
よく聞かれる訴えは次のようなものです(Hermena 2026、Kim 2021)。
- ✅ 膝のお皿の内側あたりが、ときどき鈍く痛む
- ✅ 膝を曲げ伸ばしすると、痛みをともなう「コリッ」「パキッ」という感じや、引っかかる感じがある
- ✅ 膝がカクッと抜けるような感じ(膝くずれ)や、ときどき腫れる・こわばることがある
- ✅ 走る、しゃがむ、階段の上り下りで痛む
- ✅ 映画館などで長く座ったあとに痛む
また、膝の関節鏡検査を受けた患者を調べた研究では、大きく硬くなったひだがある場合に、軟骨の傷が多く見つかりました。ひだのある患者では、お皿の裏や太ももの骨の内側の一部に傷が多くみられたと報告されています(Christoforakis 2006)。
困るのは、半月板の損傷、お皿の裏の軟骨の問題、成長期にもみられる離断性骨軟骨炎など、ほかの病気と症状が似ていることです。
だからこそ、「痛い場所」だけで決めずに、ほかの原因を一つずつ確かめていく評価が大切だと考えています。
3. 解剖 ── ひだはどこにあるのか
膝のひだは、場所によって4つに分けられます(Kim 1997)。
- 膝蓋上ひだ:お皿の上のほう(87.0%)
- 内側ひだ:お皿の内側(72.0%)
- 膝蓋下ひだ:お皿の下のほう(86.0%)
- 外側ひだ:お皿の外側(1.3%)
カッコ内は、400膝を関節鏡で調べたときに見つかった割合です(Kim 1997)。

膝の中のひだの位置。左:正面から見た図、右:横から見た図(Lee 2017) 出典:Lee PYF, Nixion A, Chandratreya A, Murray JM. Synovial Plica Syndrome of the Knee: A Commonly Overlooked Cause of Anterior Knee Pain. Surg J (N Y). 2017;3(1):e9-e16, Fig. 1. CC BY
今回の主役は、痛みの原因として話題になることが多い 内側ひだ です。
内側ひだは、関節の内側の壁から始まり、斜め下へ向かって、お皿の下にある脂肪のかたまり(膝蓋下脂肪体)を覆う膜につながっています(Kim 2021)。その途中で、太ももの骨の内側のふくらみ(大腿骨内側顆)の前 を帯のように通ります(Paczesny 2009)。
エコー検査でお皿を内側へ動かすと、内側ひだが太ももの骨のふくらみの上を滑り、お皿の裏側へ入り込む様子がみられることがあります。ただし、この動きが見えるだけで、痛みの原因とは限りません(Paczesny 2009)。
炎症などで厚く硬くなったひだが周囲とこすれたり挟まったりすると、痛みに関わることがあります(Hermena 2026)。
お皿の内側にエコーを当てると、内側ひだは、お皿を内側から支える帯状の組織(内側膝蓋支帯)より深く、太ももの骨の内側のふくらみの手前に、帯状に見えることがあります(Paczesny 2009)。
4. エコーでの評価方法 ── 論文から
タナ障害の評価でよく参照されるのが、ポーランドの研究グループが発表した研究です。エコー(超音波)で、お皿を動かしながらひだの動きを観察する方法 を示しました(Paczesny 2009)。
4-1. やり方
- あおむけで、膝をまっすぐ伸ばし、太ももの力を抜いてもらう
- まず普通のエコー検査で、関節の中に水(関節液)がたまっていないかを確認する
- お皿の内側に、プローブ(エコーを当てる器具)を横向きに当てる
- 画面に「太ももの骨の内側のふくらみ」「お皿の内側のふち」「内側支帯」の3つが同時に映る位置を探す
- お皿を指で内側へ約1cm押し、離す。そのときのひだの動きを観察する
ポイントは、膝を屈伸させるのではなく、お皿を横に動かして見ることです。
また、プローブを強く押しつけると、それ自体で痛みが出てしまいます。論文でも、普段のエコー検査以上の力はかけないと明記されています(Paczesny 2009)。
エコーで内側のひだが写ると、次のように見えます。別の論文に載っている画像です。矢印がひだ、E が関節にたまった水です。

短軸(横向き)のエコー像。矢印が内側のひだ、E が関節液(Basha 2020)。日本語のラベルは当院で追加 出典:Basha MAA, et al. Diagnostic accuracy of ultrasonography in the assessment of anterior knee pain. Insights Imaging. 2020;11:107, Fig. 7b. CC BY 4.0(一部切り抜き・日本語ラベル追加)
4-2. 陽性と判断する3つの基準
- お皿を動かすと、ひだが骨のふくらみの上を滑るのが見える
- お皿を内側へ押したとき、ひだがお皿の下に入り込む
- その操作で、いつもの痛みや不快感が出る
3つすべてがそろったときだけ「陽性」 とします(Paczesny 2009)。
4-3. 数字の読み方
この方法の成績は、次のように報告されています(Paczesny 2009)。
- 感度 90%:関節鏡で実際にタナ障害と確かめられた人のうち、エコーで陽性になった割合(68膝中61膝)
- 特異度 83%:関節鏡でタナ障害ではないと確かめられた人のうち、エコーで陰性になった割合(23膝中19膝)
いい数字に見えますが、読むときに注意したい点があります。
① 痛みのない人でも、ひだは見える 痛みのない60膝を同じ方法で調べると、約4割(23膝)でひだが見え、7膝ではひだがお皿の下に入り込んでいるのに痛くなかった。一方、3つの基準すべてを満たした人は0膝 でした(Paczesny 2009)。 → 「見える」「入り込む」だけでは足りず、痛みの再現までそろって初めて意味がある ということです。
② 陰性でも否定はできない エコーで陰性だった人のうち、実際にタナ障害だった人は 約4人に1人 いました(陰性的中率73%)。 → 「エコーで陰性だからタナ障害ではない」とは言えません。
③ 条件が限られた研究 対象は、症状が6か月以上続き、保存療法で良くならなかった人(平均20歳)です。検査したのは、膝のエコーを2000件以上行った医師1人 でした。 → 発症してすぐの人や、年齢が大きく違う人に、この数字をそのまま当てはめることはできません。
④ ほかの病気があると見誤りやすい 半月板の損傷、軟骨の傷、お皿の位置のずれなどがあると、見逃したり、逆にタナ障害と誤って判断したりすることがありました。 また、タナ障害だけの人では、関節に水がたまっていなかった とも書かれています(Paczesny 2009)。水がたまっているときは、ほかの原因も考え続ける必要があります。
5. 症例1:50代女性・バスケットボール選手
ここからは、実際の症例です。まずは、自分が実際にたどった評価の順番 をそのまま書きます。
来院までの経過
- 50代の女性、バスケットボール選手
- 試合の後に 左膝の後ろ が痛くなった
- ぶつけた、ひねったなどのきっかけはない
- 翌朝に痛みが強くなり、歩いても痛い
- 痛みは、一番強いときで 10段階の7(NRS 7)
- 膝のけがや持病はない
① まず立って屈伸してもらう
膝を曲げきったところで痛みが出ました。曲がる範囲も狭い。
この時点で、「関節の中に水がたまって、曲げきれないのではないか」と考えました。
② テストで候補を絞る
- 膝を伸ばしきる(過伸展):痛みなし
- マックマレーテスト(膝をひねりながら曲げ伸ばしし、半月板の痛みを見るテスト):陰性
- 膝蓋骨圧迫テスト(お皿を押して、お皿の裏の軟骨の痛みを見るテスト):陰性
半月板の要素は少ないのか。お皿の裏の軟骨の問題も、所見はない。
ただし、テストが陰性でも完全に否定できるわけではありません。ここでは「可能性は低め」として、次に進みます。
③ エコーで中を見る
- お皿の上の部分に、水(関節水腫)がたまっていた
- 内側に水が多い。ここに違和感を持ちました
- 内側半月板に、腫れや、はみ出しは見られない
- 骨のとげ(骨棘)が少しある
この時点で考えたのは、タナ障害、または関節の中の何らかの問題 です。
④ なぜ「滑膜ひだ」を一番に疑ったか
関節の中の問題は、まだ候補に残ります。
でも、水はそれほど多くない。そして、半月板や軟骨のテストでは はっきりした所見が出ない。
内側に多い水と、曲げきったときの痛み。ほかの所見が乏しいことを合わせて、滑膜ひだによる痛みを一番に疑いました。
一方で、膝の後ろの痛みという訴えや、水がたまっている点は、論文で示されたタナ障害の典型とは少し違います。ほかの原因がないか、この先も見続ける必要がある と考えています。
⑤ 最後に、ほかの原因を確認する
- うつ伏せで、後十字靭帯(膝の中で、すねの骨が後ろにずれないように支える靭帯)の揺れを確認:大きな問題なし
- ベーカー嚢腫(膝の裏にできる、水のたまった袋):所見なし
医師との連携と施術
提携している医師の見立ても 「滑膜ひだの疑い」 で、施術をしながら経過をみる方針になりました。良くならない場合は、医療機関で精密検査を受けていただく予定です。
施術では、水が引くことを目的に、ラジオ波(体の中から温める機器)で膝の周りを温めました。
施術の直後、膝を最後まで曲げられるようになり、曲げたときの痛みも軽くなりました。
まだ初回の変化で、これで治ったというわけではありません。今後の経過を追っていきます。
6. 症例2:10代前半の男の子・ランニング時の痛み
もう一人は、年齢も痛み方もまったく違う症例です。
来院時の状態
- 10代前半の男の子
- 走ると膝が痛い。痛くなってから約3週間
- 歩くのは問題なし
- でも、片足スクワットと片足ジャンプで、痛みが10段階の7
- 関節の水は、ごくわずか
- 膝の内側に圧痛が強い
第一に否定したかった(それが原因じゃないと確認したい)のは、膝の離断性骨軟骨炎です。 ドクターに紹介し、MRI検査の結果、離断性骨軟骨炎の所見はなく、内側タナ障害の疑いということでした。
動的エコーの結果
4章で紹介した方法で、お皿を内側へ動かしながらエコーで観察しました。ひだがお皿の下に入り込む様子は見られず、3つの基準はそろいませんでした。論文の基準では「陰性」です。
お皿を内側へ動かしながら、膝の内側をエコーで観察した動画(症例2)
ただし、4章で書いたとおり、エコーで陰性だった人の約4人に1人は実際にタナ障害でした(Paczesny 2009)。陰性だけでタナ障害を否定せず、症状の経過と合わせて見ていくことにしました。
方針
- 走る、跳ぶ、深い片足スクワットなど、痛みが出る動きを一時的に控える
- 完全に休むのではなく、痛みと水が増えない範囲で、太ももや股関節まわりの軽い運動から始める
- 痛みと水の量を見ながら、少しずつ負荷を戻していく
気をつけていること
成長期の膝の痛みには、オスグッド病など、この年代に特有の病気 があります。軟骨の病気(離断性骨軟骨炎)や、生まれつき形の違う半月板(円板状半月板)なども、タナ障害と似た症状を出すことがあります。
タナを見つけても「これが原因」と決めつけず、ドクターに紹介して診断することが重要です。
7. 2つの症例をくらべて
同じ「タナ障害の疑い」でも、中身はかなり違います。
始まり方
- 50代:試合の後に、急に
- 10代:走っているうちに、だんだん
痛みが出る動き
- 50代:曲げきったとき、歩くとき。片足スクワットでは痛くない
- 10代:歩くのは平気。片足スクワット・片足ジャンプで強く痛む
関節の水
- 50代:少しあり。内側に多い
- 10代:ごくわずか
特に気をつけること
- 50代:半月板や骨の問題が隠れていないか
- 10代:成長期に特有の膝の病気ではないか
片足スクワットの結果が正反対なのは、興味深いところです。同じ名前の見立てでも、痛みの出方から考える順番は変わる のだと感じています。
8. まとめ
- 滑膜ひだ(タナ)は、多くの人の膝にある普通の構造
- 「ひだが見える」だけでは、痛みの原因とは言えない
- エコーでは、お皿を動かしたときのひだの動きと、いつもの痛みが出るかをセットで見る
- エコーで陰性でも、タナ障害を否定しきれない
- 半月板・軟骨・成長期の病気など、似た症状の原因を一つずつ確かめる
- 良くならないときは、医療機関と連携して精密検査につなげる
膝の曲げ伸ばしで引っかかる、曲げきると痛い。そんなお悩みがある方は、まず「どこから来ている痛みなのか」を一緒に確かめるところから始めましょう。
参考文献
- Basha MAA, Eldib DB, Aly SA, et al. Diagnostic accuracy of ultrasonography in the assessment of anterior knee pain. Insights Imaging. 2020;11:107. doi:10.1186/s13244-020-00914-2.
- Christoforakis JJ, Sanchez-Ballester J, Hunt N, Thomas R, Strachan RK. Synovial shelves of the knee: association with chondral lesions. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2006;14(12):1292-1298.
- Hermena S, Li D. Plica Syndrome. In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026年6月更新版.
- Kim SJ, Choe WS. Arthroscopic findings of the synovial plicae of the knee. Arthroscopy. 1997;13(1):33-41.
- Kim SJ, Koh YG, Kim YS. An acquired plica-induced notch in the medial femoral condyle in a patient with medial patellar plica syndrome: a case report. BMC Musculoskelet Disord. 2021;22:301.
- Lee PYF, Nixion A, Chandratreya A, Murray JM. Synovial Plica Syndrome of the Knee: A Commonly Overlooked Cause of Anterior Knee Pain. Surg J (N Y). 2017;3(1):e9-e16.
- Ogata S, Uhthoff HK. The development of synovial plicae in human knee joints: an embryologic study. Arthroscopy. 1990;6(4):315-321.
- Paczesny Ł, Kruczyński J. Medial Plica Syndrome of the Knee: Diagnosis with Dynamic Sonography. Radiology. 2009;251(2):439-446.
※本記事は施術内容の一般的な紹介を目的としたものであり、特定の効果を保証するものではありません。 ※症状には個人差があります。 ※必要に応じて医療機関での検査を推奨します。